成実ちゃん恋愛事情

　伊達さんとこの家臣、というか従兄弟ですね。伊達成実くんを題材にして書いたものです。

　周りのキャラが濃すぎていろいろと苦労していそうな成実くんです。3では夜が好きで口布（？）をしていることがわかってびっくりしましたが、これはそれがわかるまでに書いたものです。

　もぶってやつですので苦手な方はバックプリーズ。

　梵にはいつも負けている気がしていた。うん、まあ仕方がないんだけれどね、一応あれでも城主だし、というかもう奥州筆頭だし。手綱なしで馬に乗っちゃったり南蛮語の西洋かぶれ押し出しちゃったりなんだっけ、きゃら……？とやらが強すぎるのは俺も知ってるんだよ。
　でも俺負けたくなかったからさ、一応俺ってば軍の一翼を担う武将だし、これでも強いんだぜ？武の成実とか言われるくらいには名が通ってる。武家の子として刀も槍も弓もやってきたし、最近は改良した種子島とか使ってみることもある。黒脛巾にちょこっと教えてもらって飛び道具にも手を出してみた。
「俺は梵の家臣としてちゃーんと守ってやるよ、梵一筋でね」
昔はそんなことを言っていたことがあったけど、ちょっと訂正。


　俺は、鬼庭綱元……梵の重臣、お小言の五月蠅いもう一人の、そいつの所へ養女に来たその子を守りたくなったわけ！

　下級武士の娘なんだけど奉公に来てて、俺の稽古の時に出くわしたのがきっかけでいろいろ話すようになったんだけど、全くの世間知らずってわけじゃない。俺の知らないことを知ってて、でも俺の知ってることを知らない。お互い話の内容は尽きないし不意に降りる沈黙だって心地いい、なんて。戦ばっかりしてる俺には新鮮なことで、やっぱり毒されていくように好きになっていってる。

　だけど。俺が梵の従兄弟ってことが此処で仇になるんだよなー。俺とその子で散歩してたところにぶつかった梵は、興味津々でその子との仲を探ってくる。そしてのたまうんだ、
「そいつぁいい、ならこいつは俺の側室にする」

　召し上げられるには家柄が必要だ、その子は鬼庭の所へ養女としてはいり、そして俺は。梵を殴ってふざけるな！って言ったあとから、その子の手を引いてさっさとその場を後にしたものの、その後会えていない。何より悔しくて、いつもの場所で別れる前に、勢いで何処にもいかないでほしいこと、自分だって、いや自分の方がずっと早くから好きだったことを告げた。
　彼女の答えはわからない。ごめんなさいと言った。それってどれに対しての謝罪なの？俺には分からない、他のやつにはわかるのかもしれないけど。

　想いの長さは勿論俺が長いけれど、それが何だっていう、つまらないことだって言うのは俺が一番よく知ってるんだよね、飛び越えられるだけの想いをお互いが持てば、そんなの。ああもう！何で俺こんなに女々しいんだよ！和歌とか持ってきて書いてみたけどさ、これってめちゃめちゃ俺ヘタレじゃん……。

　妹と言はば無礼し恐ししかすがに
　　　　　　　　　　懸けまく欲しき言にあるかも

　書いてはみたけど、これを誰かに託して持って行かせるなんて恥ずかしいし、何より俺が納得できない。と、いうわけで俺は単身突撃した。
「政宗様の祝言の準備で忙しい。あの子はお前に会っている暇などない。お前、俺が許すと思うのか？嫁入り前に男を部屋に寄越すなど」
「だーぁぁ！もう、うっせぇな！気まずいまま嫁になんて行かせるか！つか、梵の二人目、三人目になるよりも、俺のたった一人になってほしいんだよ！あいつの言う大事なんて当てにならねえ！好きだって、俺は伝えてるしな。だからどいてもらうぜ綱！」
　こっちの来訪はものすごい足音と此処へ向かってくるまでの大声でわかったことだろうと思う。だから俺は中へ声をかけずにすぱん、と襖を開けてぽい、と和歌の書かれた紙を放り投げた。真っ赤な顔してこっちをキッと睨んだその子は、落ちた手紙を乱暴に広げて読み、きょとんとした眼を俺に向けた。

「……あ、の……」
「ん？どした？」
「随分、その……下手（したて）に出ましたね」
俺の選曲が悪いってことか？梵の言うところのchoiceが悪いってことか。一緒に部屋まで付いてきた綱がそれを見てくくっと哂った。そうして肩に手を置いてにやにや笑いながら小声で言ったのだ、「武の成実も、案外可愛らしいものだ」と。
　な、なんでだよ！

　それから。梵を説得する間に俺は屋敷をもう一人迎えるために準備させていた。この際梵が何を言おうと譲らないつもりだったし、なんなら実力行使をしてもいい、いわゆる家出ってやつ？
　でもさ、俺知らなかったんだけど、複数人の一人になるよりたった一人をって言ったの、あの子だけじゃなくて綱も嬉しかったみたいでさ。口添えを、してくれたらしい。最終手段として伊達に嫁すことを命じようとまで思っていたらしいのを、結局取りやめることにし、盆は多いに未練を残しながらも手を引いた。
　あの子は俺の恋人となった。

　龍の宝をくれてやるんだ、大事にしやがれと言われたけど、それって元々俺の言葉でしょ？俺から大事なもんとろうとしといてよく言うぜ。絶対宝だって思ったの俺の方が早いに決まってるし。梵ってばあれもこれもって手ぇ出し過ぎなんだよ。こればっかりは俺の勝ちでしょう、一番欲しいものを特別恩賞で獲得ってね！

　よーっし、綱！勝鬨を上げようぜ！